• Harp Concerto(2024)

      Orchestra
    • Duration - 28:15

    • Mov.1 10'

    • Mov.2 Kadenza 2'

    • Mov.2 7'

    • Mov.3 8'

    Harp Concerto

    ハープ協奏曲は、ロサンゼルス・フィルハーモニック、ボルドー国立オペラ座、パリ・フィルハーモニー管弦楽団、シンガポール交響楽団の共同委嘱作品で、ロサンゼルス・フィルハーモニックのハープ奏者であるエマニュエル・セイソンが演奏することになっていた。

    2023年の夏、ロサンゼルスのハリウッドボウルでロサンゼルス・フィルハーモニックとの最初のコンサートに出演した際に、エマニュエルとの最初のセッションを行った(17,500席の会場は満席だった)。すぐに作曲を始めたかったが、忙しいスケジュールのため、翌年の2月まで作業が遅れた。5月にエマニエルが日本を訪れ、ほぼ完成した第1楽章を見直し、必要に応じて調整を行った。7月までにハープパートを完成させ、9月中旬にオーケストレーションが完成した。その結果、3楽章からなる30分の作品が完成した。

    第1楽章は主にアルペジオで構成されたロ短調のアレグロ。最後に完成する第2楽章は、ゆったりとした6/8+7/8のリズムのニ短調の緩徐楽章です。カデンツァの後、第3楽章のヘ短調のトッカータ アレグロで曲は最高潮に達します。ハープは優雅で穏やかで落ち着いた音楽とよく言われますが、この協奏曲は強烈でワイルドでダイナミックで、伝統的なコンセプトとはまったく異なります。これは私自身のビジョンとエマニュエルの演奏スタイルの影響の両方を反映しています。

    9か月の作曲期間(構想に費やした時間を含めると1年半以上に及びます)は、私にとっては長く感じました。その間、多くのコンサートで集中力の多くを費やしましたが、作品をさらに洗練させることができました。関係者全員に深く感謝しており、今後の公演で作品が進化していくのを楽しみにしています。

    久石譲

    • The Chamber Symphony No.3(2024)

      Chamber Music
    • Duration - 22:00

    • Ⅰ. Symphonia 8:00'

    • Ⅱ. Invention for two voices 7:00'

    • Ⅲ.Toccata 8:00'

    The Chamber Symphony No.3

    2020年にピアニストの滑川真希さん、Philharmonie de Paris、Arts Electronica Festivalからの共同委嘱で作曲を開始したが、Covid-19のためコンサートが2020年に延期されたため楽曲の仕上げも2022年の春となった。
    当初Sonatinenと題して3楽章の楽曲として完成したが、作曲が遅かったせいで初演は第3楽章のToccataのみとなった。誠に反省しているのだが、その時の真希さんのパフォーマンスはパリの観客を完全に魅了した。
    そして今年Music Future用に書き直せないか?と思いつき、1月より編曲を試みたが、実際原曲自体も修正して全く別の作品に仕上がった。そこでタイトルもChamber Symphony No.3(室内交響曲第3番)とした。

    4月には完成したが、元々ピアノのソロという制約もあったので同時に多くの要素を入れることはできなかった。そのため2声部を基本に作曲したので(のちに3声部に変えたため作曲が大幅に遅れた)それを活かせる方法として僕のSingle Track Musicという単旋律を基本としたオーケストレーションを導入した。その説明は省くが、その方法によりピアニスティックなパッセージとうまくマッチして立体的な楽曲に仕上がった。
    全3楽章、約22分の作品となった。

    • MKWAJU for MFB(2023)

      Chamber Music
    • Duration - 19:36

    • I. MKWAJU 6'

    • II. SHAK SHAK 3'

    • III. LEMORE 6'

    • IV. TIRA-RIN 4'

    MKWAJU for MFB

    久石譲:MKWAJU for MFB(2023) *World Premiere
    I. MKWAJU
    II. SHAK SHAK
    III. LEMORE
    IV. TIRA-RIN

    MKWAJUはスワヒリ語のタマリンドの樹の意味である。作曲当時の1980年前後に東アフリカの民族音楽を集めたLPレコードを聴いてヒントを得たと記憶している。

    ムクワジュ・アンサンブルによって1981年レコーディングし、その後英国のバラネスク・カルテットを招聘した国内ツアーなどで演奏した。またロンドン・シンフォニーとのアルバム「Minima_Rhythm」でもオーケストラ用にアレンジしている。

    今回Terryさんを迎えたMUSIC FUTURE Vol.10のための新曲も試みたがしっくり来ず、レジェンドである彼へのオマージュの意味を含めて4曲からなるMKWAJU組曲として完成させた。

    Re-Composeにあたって、繰り返しを意味するリピートマークが多用されていることに懐かしさと多少の違和感を覚えたが(現在の僕はそれを使うことはない)ミニマル音楽の基本であることを重視し、原作を尊重しながら作業を進めた。Marimba、Vibraphone等をフィーチャーしたMusic Future Bandの演奏を楽しみにしている。

    久石譲

    • Adagio for 2 Harps and Strings(2023)

      Orchestra
    • Duration - 12:20

    Adagio for 2 Harps and Strings

    久石譲:Adagio for 2 Harps and Strings

    2023年新日本フィルハーモニー交響楽団からの委嘱で、9月9日トリフォニーホール、11日サントリーホールの第651回定期演奏会のために作曲した。

    自らマーラーの交響曲第5番を指揮するのでその前に演奏することになる。マーラーの楽曲は全5楽章からなり、約1時間10分を要する大曲である。第4楽章のアダージェットが映画『ベニスに死す』などにも使われとても有名で、マーラーの交響曲の中でも最も人気が高い作品である。

    当然僕としてはそれを意識した上で2023年7月末から作曲を開始した。7月はワシントン・ナショナル交響楽団を含む3つのオーケストラですべて異なるプログラムを行った直後なので、かなり疲れたため困難な状況だったが、東京から離れた仕事場で8月10日までに大方の作曲を終了し、東京で仕上げに取り組み8月15日に完成した。異例の速さだったが、これはとても幸運だったとしか言いようがない。

    漠然と「マーラー”アダージェット”の久石版が書ければ」と考えていたのだが、詰まるところは遅いテンポの楽曲を書きたかったということである。

    ミニマル系の作曲ではリズムがメインになるのでスローな曲は得意ではない。特にアメリカ系のミニマル作品には少ない。僕の作品でも遅い楽曲はあまり多くないので、今回チャレンジしようと考えた。また、マーラーの楽曲と一緒に演奏するのはそれなりのプレッシャーがかかるのだが、幸い上記のスケジュールをひたすらこなして目の前のことに集中したため、順調に仕上がったわけである。

    だが、完成したスコアを見るとかなり細かい音符もあり演奏は決して楽ではない。

    編成は2ハープとストリングスでほぼマーラーの”アダージェット”と同じで(ハープが1台僕の曲では多い)約12分半の長さになった。出だしのハープの音形は半音高いが、マーラーからの引用で、もちろん敬意を込めての使用である。

    論理的に構成しているつもりであるが、結果として大らかな自然と人への讃歌であり、祈りでもあれば、と願っている。

    2023年8月 久石譲

    • Viola Saga -for Orchestra-(2023)

      Orchestra
    • Duration - 19:13

    • Mov.1 10'

    • Mov.2 9'

    Viola Saga -for Orchestra-

    2023/7/5

    Viola Sagaは2022年のMusic Future vol.9で初演した作品だが、今回Violaとオーケストラの協奏曲として再構成した。
    タイトルのSagaは日本語の「性ーさが」をローマ字書きしたもので意味は生まれつきの性質、もって生まれた性分、あるいはならわし、習慣などである。
    同時に英語読みのSagaは北欧中世の散文による英雄伝説とも言われている。
    あるいは長編冒険談などの意味もある。
    仮につけていた名前なのだが、今はこの言葉が良かったと思っている。
    曲は2つの楽曲でできていて、I.は軽快なリズムによるディベルティメント、II.は分散和音によるややエモーショナルな曲になっている。
    特にII.はアンコールで演奏できるようなわかりやすい曲を目指して作曲した。
    が、リズムはかなり複雑で演奏は容易ではない。(久石譲)

    • Symphonic Suite “Princess Mononoke”(2021)

      Film
    • Duration - 26:00

    • Ⅰ.The Legend Of Ashitaka 3'

    • Ⅱ.TA TA RI GAMI 3'

    • Ⅲ.The Journey Of The West Kodamas 3'

    • Ⅳ.The Demon Power The Forest Of The Dear God 3'

    • Ⅴ.Mononoke Hime 3'

    • Ⅵ.The World Of The Dead Adagio Of Life & Death 4'

    • Ⅶ.Ashitaka And San 5'

    • Shaking Anxiety and Dreamy Globe for Two Violoncellos(2022)

      Chamber Music
    • Duration - 6:53

    Shaking Anxiety and Dreamy Globe for Two Violoncellos

    久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Cellos
    揺れ動く不安と夢の球体 ー2台のチェロのための(2022)

    原曲は2012年、Hakujjuギター・フェスティバルの委嘱作品として2台ギターのために作曲し、荘村清志氏と福田進一氏により初演された。ギターの開放弦を使ったリズミックな楽曲に仕上がったが、その後2014年にMUSIC FUTURE Vol.1においてマリンバ2台のためにRe-Composeした。そして2022年知り合いの西村朗氏が参加していた作曲家グループ「4人組」のコンサートで「2 Cellos」として再びRe-Composeした。ただスケジュールが厳しかったこともあり、最も信頼する作曲家長生淳氏に編曲を依頼した。チェロの開放弦を利用することなどを打ち合わせした上で彼に全て任せた。そして仕上がった楽曲は別の楽曲に生まれ変わった。躍動感あふれるミニマルの反復と複雑な変拍子を用いた原曲の構成はさらに立体的に、そして人間的になったと僕は考えている。

    その機会を作っていただいた西村朗氏は突然他界された。今後10年以上論争をしていくはずだった良きライバルを失い言葉もない。今回MUSIC FUTUREで演奏するのは西村朗氏への追悼の意味もある。ご冥福を心からお祈りしたい。

    曲名は、アメリカの詩人ラッセル・エドソン(1935-2014)が生命の宿る瞬間を表現した一節による。「揺れ動く不安と夢の球体」という日本語表現が気に入り、敢えて原文の文脈にとらわれず”shaking anxiety(揺れ動く不安)and dreamy globe(夢の球体)”という英語に逆変換し、新たなタイトルとした。

    久石譲

    • Viola Saga(2022)

      Chamber Music
    • Duration - 19:40

    • Mov.1 10'

    • Mov.2 9'

    Viola Saga

    Viola SagaはMUSIC FUTURE Vol.9で初演するために作曲した。今回は世界で活躍している若手作曲家Nico Muhlyとのジョイントコンサートであるが、同時にニューヨークからヴィオラ奏者のNadia Sirota氏を招聘していて彼女のために書いた曲である。

    タイトルのSagaは日本語の「性──さが」をローマ字書きしたもので意味は生まれつきの性質、もって生まれた性分、あるいはならわし、習慣などである。同時に英語読みのSagaは北欧中世の散文による英雄伝説とも言われている。あるいは長編冒険談などの意味もある。仮につけていた名前なのだが、他に思いつかず、これにした。

    僕自身は今年から海外のコンサートが再開し、作曲依頼も溜まりに溜まっていたためこなしきれず、凄まじいカオスの中にいた、いやまだいるのだが、そのためSagaは8月ニューヨークのRadio City Music Hallでの5回公演の直前にやっとII.の基本モチーフが浮かんだ。初演するコンサートの2ヶ月前である。もちろん考えていたのは数年前に遡るし、そもそもNicoとNadiaは2020年のMFに来る予定だった。その時からCOVID-19のため何度も中断を余儀なくされ、今日に至った。Radio City Music Hallの楽屋でNadiaと一緒に約2分のDemoを聞いた。彼女のホッとした安堵の表情が忘れられない。その後いくつかのコンサートと、作曲をこなしつつ10月の初め、フランスツアーの直前にやっと完成した、、、と思う。

    曲は2つの楽曲でできていて、I.は軽快なリズムによるディヴェルティメント、II.は分散和音によるややエモーショナルな曲になっている。特にII.はアンコールで演奏できるようなわかりやすい曲を目指して作曲した。この2~3年は前衛的なものより、わかりやすいものを書きたいと思っていた。つまり誰もが疲れている時に疲れる曲を聞いてもらおうとは思わなかった。その意味ではノンジャンル音楽ではある。が、リズムはかなり複雑で演奏は容易ではない。Music Future Bandへの信頼があってこその作曲である。

    2022年10月
    久石譲

    • I Want to Talk to You(2022)

      Chamber Music
    • Duration - 23:15

    • I.Want to Talk to You 11'

    • II.Cellphone 12'

    I Want to Talk to You

    「I Want to Talk to You」は、2020年5月に山形県山形市で行われる予定だった合唱の祭典コンサートで演奏するために山形県から委嘱されて作曲した。僕の作品としては初めての書き下ろし合唱作品になるはずだったがCovid-19の世界的パンデミックのため何度か順延され、2年後の2022年4月にやっと初演される運びになった。

    当初は街を歩いていても、店に入っても電車の中でも人々は携帯電話しか見ていない。人と人とのコミュニケーションが希薄になっていくこの現状に警鐘を鳴らすつもりでこのテーマを選んで作曲したが、その後の人と人との接触を控えるこの状況では、携帯電話がむしろコミュニケーションの重要なツールになった。別の言い方をすると世間という煩わし い人との関係性から逃れる便利なアイテムが最小限の人との接触のアイテムになった。なんとも皮肉なことだが、それだけ携帯電話が人々にとって必須なものになったということだろう。

    2019年12月から作曲を開始し、2020年3月に一応の完成を見たが、合唱が行われる状況にはほど遠くしばらく放置せざるを得ないと思ったが、作曲の過程で思いついた弦楽四重奏と弦楽オーケストラの作品にするアイデアが現実味を帯び、2021年3月の日本センチュリー交響楽団とのコンサートで弦楽バージョンとして演奏した。

    作詞はいくつかのキーワード、例えば「Talk to you」をコンピューターで検索し関連用語やセンテンスを抜き出し、音のイメージに合う言葉を選んでいった。最終的には1.I want to talk to youは娘の麻衣が詩としてまとめ、2. Cellphoneは僕がまとめた。約20分の作品になり、小合唱グループと大合唱グループ、それに2台のピアノとパーカッションという編成となった。

    作品としてはこれで完成しているが、僕としては日本語で聞きたいと思っている。つまり日本語バージョンであり、そこには弦楽オーケストラが演奏していることも想定できる。山形の皆さんにはこれが終わりではなく、これからも機会があるたびに進化していくこの 作品を聞いていっていただきたいと思っている。

    2022年3月31日 久石譲

    • Merry-Go-Round 2019

      Film
    • Duration - 3:37