• 2 Dances for Large Ensemble(2021)

      Chamber Music
    • Music Future Band

    • Duration - 22:36

    • I.How do you dance? 11'

    • II.Step to heaven 12'

    2 Dances for Large Ensemble

    「2 Dances for Large Ensemble」は2020年12月9日から東京近郊の仕事場で作曲をスタートした。11月の後半にMUSIC FUTURE Vol.7が行われ好評を得た後である。その時の作曲ノートには「2楽章形式で約22分、Rhythm Main」と書いている。ほとんどその通りに作品はできたのだが、大きく違う点がある。元々のアイデアは2管編成約60人を想定していた楽曲だった。

    2020年12月はまだ新型コロナ禍の真っ只中にいた。舞台上の蜜を避けるためオーケストラの3管編成、約90人の楽曲はほとんど演奏できない状況にあった。つまり、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスはできるが、マーラー、ブルックナーなどの後期ロマン派や20世紀前半の作品、例えばプロコフィエフ、ショスタコーヴィチなどは全く演奏できない状況にあった。「現代の音楽」を演奏したいと考えている僕としては、懸命にその編成でできる楽曲を探したのだが、ほとんどない有様だった。そこで2管編成で演奏できる楽曲、このようなパンデミックの状況でも演奏できる楽曲を作ろうというのがそもそもの発想だった。

    僕は日記のように毎日作った楽曲を、あるいは途中経過をコンピューターに保存しているので、楽曲の成立過程を簡単に見ることができる。2 Dancesは12月はら翌2021年1月の中旬まで集中して作曲した後、飛び飛びで作った形跡はあるが、だいぶ飛んで8月の中旬からまた集中して作曲している。これは交響曲第2番と第3番を締切の関係で先に作らなければならなかったことやコンサートなど他のことをするため一時中断したということである。ちなみに2020年から2021年にかけて2つの交響曲を書いたことは本当に嬉しいことであり、ある意味奇跡的なことでもある。少なくとも僕にとって。MUSIC FUTURE Vol.8に向けて仕上げることは春先に決めていたように思われるが、そういう曖昧に考えたことなどは残念ながらコンピューター上には残らない。

    「2 Dances for Large Ensemble」はダンスなどで使用するリズムを基本モチーフのようにして構成している。そのため一見聴きやすそうだが、かなり交錯したリズム構造になっているため演奏は難しい。これはMFB(Music Future Band)の名手たちへの信頼があって初めて書けることである。また使用モチーフを最小限にとどめることでリズムの変化に耳の感覚が集中するように配慮したつもりである。またMov.2では19小節のかなりメロディックなフレーズが全体を牽引するが、実はそこにリズムやハーモニーのエッセンスが全て含まれている。その意味では単一モチーフ音楽、いわゆるSingle Musicといえる。

    最後に2 Dancesはダンスのリズムを使用した楽曲であるが、これで踊るのはとても難しいと思う。もし踊る人がいたら、僕は、絶対観てみたい。

    久石譲