Music
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Symphony No.3 (Metaphysica)(2021)
Orchestra -
World Premier
2021/9/11 Tokyo Sumida Triphony Hall -
New Japan Philharmonic Orchestra
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4(pic),4(eh),4(bcl),3(cbn)/6,4,3(btb),1/timp/5perc/hp/pf(cta)/strings
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Duration - 32:43
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I.existence 11'
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II.where are we going 11'
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III.substance 11'
Symphony No.3 (Metaphysica)
Metaphysica(交響曲第3番)は新日本フィル創立50周年を記念して委嘱された作品です。新日本フィルとはもうかれこれ30年くらい一緒に演奏していて、お互いをよく知っています。シーズンのオープニングコンサートでこの新作とマーラーを演奏することは大きなプレッシャーもありますが、最大の楽しみでもあります。
新作は2021年4月末から6月にかけて大方のスケッチを終え、8月中旬にはオーケストレーションも終了し完成しました。前作の交響曲第2番が2020年4月から2021年4月と1年かかったのに比べると約4ヶ月での完成は楽曲の規模からしても僕自身にとっても異例の速さです。
楽曲は4管編成(約100名)で全3楽章からなり約35分の長さです。この編成はマーラーの交響曲第1番とほぼ同じであり、それと一緒に演奏することを想定して書いた楽曲でもあります。
当然何らかの影響はあると思います。
僕の尊敬する作曲家デヴィット・ラング氏は「ミニマル系の作曲家は一つの楽曲をできるだけ単一要素で乗り切ろうとあらゆる手を尽くして作曲するけど、マーラーは次々に新手のテーマを投入して楽曲を構成するから羨ましい」とジョークまじりに話していましたが、これがミニマルミュージックと他の音楽の大きな違いです。
その全く違うタイプの楽曲を組み合わせることでかつて経験したことのないプログラムになればと考えています。
Metaphysicaはラテン語で形而上学という意味ですが、ケンブリッジ大学が出している形而上学の解説を訳すと「存在と知識を理解することについての哲学の一つ」ということになります。要は感覚や経験を超えた論理性を重視するということで、僕の場合は音の運動性のみで構成されている楽曲を目指したということです。
I. existence は休符を含む16分音符3つ分のリズムが全てを支配し、その上にメロディー的な動きが変容していきます。
II. where are we going? は26小節のフレーズが構成要素の全てです。それが圧縮されたり伸びたりしながらリズムと共に大きく変奏していきます。
III. substance は ド,ソ,レ,ファ,シ♭,ミ♭の6つの音が時間と空間軸の両方に配置され、そこから派生する音のみで構成されています。ちなみにこれはナンバープレースという数字のクイズのようなゲームからヒントを得ました。
何やら難しい事ばなり書いてきましたが、これは生きた音楽を作るための下支えでしかありません。
皆様には心から楽しんでいただけたら幸いです。
2021年8月12日 久石譲
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