• Symphony No.3 (Metaphysica)(2021)

      Orchestra
    • Duration - 32:43

    • I.existence 11'

    • II.where are we going 11'

    • III.substance 11'

    Symphony No.3 (Metaphysica)

    Metaphysica(交響曲第3番)は新日本フィル創立50周年を記念して委嘱された作品です。新日本フィルとはもうかれこれ30年くらい一緒に演奏していて、お互いをよく知っています。シーズンのオープニングコンサートでこの新作とマーラーを演奏することは大きなプレッシャーもありますが、最大の楽しみでもあります。

    新作は2021年4月末から6月にかけて大方のスケッチを終え、8月中旬にはオーケストレーションも終了し完成しました。前作の交響曲第2番が2020年4月から2021年4月と1年かかったのに比べると約4ヶ月での完成は楽曲の規模からしても僕自身にとっても異例の速さです。

    楽曲は4管編成(約100名)で全3楽章からなり約35分の長さです。この編成はマーラーの交響曲第1番とほぼ同じであり、それと一緒に演奏することを想定して書いた楽曲でもあります。

    当然何らかの影響はあると思います。

    僕の尊敬する作曲家デヴィット・ラング氏は「ミニマル系の作曲家は一つの楽曲をできるだけ単一要素で乗り切ろうとあらゆる手を尽くして作曲するけど、マーラーは次々に新手のテーマを投入して楽曲を構成するから羨ましい」とジョークまじりに話していましたが、これがミニマルミュージックと他の音楽の大きな違いです。

    その全く違うタイプの楽曲を組み合わせることでかつて経験したことのないプログラムになればと考えています。

    Metaphysicaはラテン語で形而上学という意味ですが、ケンブリッジ大学が出している形而上学の解説を訳すと「存在と知識を理解することについての哲学の一つ」ということになります。要は感覚や経験を超えた論理性を重視するということで、僕の場合は音の運動性のみで構成されている楽曲を目指したということです。

    I. existence は休符を含む16分音符3つ分のリズムが全てを支配し、その上にメロディー的な動きが変容していきます。

    II. where are we going? は26小節のフレーズが構成要素の全てです。それが圧縮されたり伸びたりしながらリズムと共に大きく変奏していきます。

    III. substance は ド,ソ,レ,ファ,シ♭,ミ♭の6つの音が時間と空間軸の両方に配置され、そこから派生する音のみで構成されています。ちなみにこれはナンバープレースという数字のクイズのようなゲームからヒントを得ました。

    何やら難しい事ばなり書いてきましたが、これは生きた音楽を作るための下支えでしかありません。

    皆様には心から楽しんでいただけたら幸いです。

    2021年8月12日 久石譲

    • Toccata(2022)

      Other
    • Duration - 20:31

    • Mov.1 7'

    • Mov.2 7'

    • Mov.3 6'

    Toccata

    Joe Hisaishi
    Toccata

    Composition : 2020-2022.
    Commande du Massachusetts Institute of Technology’s Center for Arts,
    Science, and Technology (CAST), du Festival Ars Electronica et de la
    Philharmonie de Paris.
    Durée : environ 9 minutes.

    Ma Toccata a été composée à la demande de Maki Namekawa pour un concert à la Philharmonie de Paris programmé à l’origine à l’automne 2020. Je lis dans mes premières ébauches que j’ai commencé à y travailler en janvier 2020. Puis sont arrivés la Covid-19, le confinement et les annulations dans le monde entier pour des artistes comme Maki et moi-même. J’ai utilisé le temps qui m’était subitement accordé par la force des choses pour composer plusieurs grandes pièces pour orchestre, dont mes Symphonies nos 2 et no 3.

    Dans ma Toccata je suis à la recherche de la fluidité dans le son, associée à la diversité
    rythmique que j’admire tant en musique baroque. En me concentrant sur des mouvements horizontaux, linéaires, et en évitant les dissonances manifestes dans les accords, j’espère faire naître une réponse émotionnelle chez l’auditeur plutôt que de lui en imposer une. Maki Namekawa est une excellente pianiste, avec une approche directe et sincère de la musique qu’elle interprète. J’attends son concert avec beaucoup d’impatience.

    Joe Hisaishi
    Traduction : Delphine Malik

    • 2 Dances for Large Ensemble(2021)

      Chamber Music
    • Duration - 22:36

    • I.How do you dance? 11'

    • II.Step to heaven 12'

    2 Dances for Large Ensemble

    「2 Dances for Large Ensemble」は2020年12月9日から東京近郊の仕事場で作曲をスタートした。11月の後半にMUSIC FUTURE Vol.7が行われ好評を得た後である。その時の作曲ノートには「2楽章形式で約22分、Rhythm Main」と書いている。ほとんどその通りに作品はできたのだが、大きく違う点がある。元々のアイデアは2管編成約60人を想定していた楽曲だった。

    2020年12月はまだ新型コロナ禍の真っ只中にいた。舞台上の蜜を避けるためオーケストラの3管編成、約90人の楽曲はほとんど演奏できない状況にあった。つまり、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスはできるが、マーラー、ブルックナーなどの後期ロマン派や20世紀前半の作品、例えばプロコフィエフ、ショスタコーヴィチなどは全く演奏できない状況にあった。「現代の音楽」を演奏したいと考えている僕としては、懸命にその編成でできる楽曲を探したのだが、ほとんどない有様だった。そこで2管編成で演奏できる楽曲、このようなパンデミックの状況でも演奏できる楽曲を作ろうというのがそもそもの発想だった。

    僕は日記のように毎日作った楽曲を、あるいは途中経過をコンピューターに保存しているので、楽曲の成立過程を簡単に見ることができる。2 Dancesは12月はら翌2021年1月の中旬まで集中して作曲した後、飛び飛びで作った形跡はあるが、だいぶ飛んで8月の中旬からまた集中して作曲している。これは交響曲第2番と第3番を締切の関係で先に作らなければならなかったことやコンサートなど他のことをするため一時中断したということである。ちなみに2020年から2021年にかけて2つの交響曲を書いたことは本当に嬉しいことであり、ある意味奇跡的なことでもある。少なくとも僕にとって。MUSIC FUTURE Vol.8に向けて仕上げることは春先に決めていたように思われるが、そういう曖昧に考えたことなどは残念ながらコンピューター上には残らない。

    「2 Dances for Large Ensemble」はダンスなどで使用するリズムを基本モチーフのようにして構成している。そのため一見聴きやすそうだが、かなり交錯したリズム構造になっているため演奏は難しい。これはMFB(Music Future Band)の名手たちへの信頼があって初めて書けることである。また使用モチーフを最小限にとどめることでリズムの変化に耳の感覚が集中するように配慮したつもりである。またMov.2では19小節のかなりメロディックなフレーズが全体を牽引するが、実はそこにリズムやハーモニーのエッセンスが全て含まれている。その意味では単一モチーフ音楽、いわゆるSingle Musicといえる。

    最後に2 Dancesはダンスのリズムを使用した楽曲であるが、これで踊るのはとても難しいと思う。もし踊る人がいたら、僕は、絶対観てみたい。

    久石譲

    • Asian Works 2020(2021)

      Orchestra
    • Duration - 11:53

    • Ⅰ Will be the wind 4'

    • Ⅱ Yinglian 3'

    • Ⅲ Xpark 4'

    • I Want to Talk to You ~ for string quartet, percussion and strings(2021)

      Chamber Music
    • Duration - 22:00

    I Want to Talk to You ~ for string quartet, percussion and strings

    2020年5月に行われる予定だった山形合唱連盟の記念コンサートで演奏するために委嘱されて、2019年10月から2020年3月にかけて作曲した。

    作品自体は 1. I Want to Talk to You 2. Cellphone の2曲からなる約20分の作品になったが、作曲の過程で弦楽四重奏と弦楽オーケストラの作品にするアイデアが浮かび、比較的短期間でそれも完成した。

    街中を歩いていても、店の中でも人々は携帯電話しか見ていない。人と人とのコミュニケーションが希薄になっていくこの現状に警鐘を鳴らすつもりでこのテーマを選んだが、世界はCovid-19によって大きく変容した。人と人とのディスタンスを取らざるを得ないという状況では携帯電話がむしろコミュニケーションの重要なツールになった。この時期にこの曲を書いたことに何か運命的なものを僕は感じている。

    日本センチュリー交響楽団によって今年の3月大阪で世界初演した。本日はその第1曲目を演奏する。

    • 2 Pieces 2020 for Strange Ensemble(2020)

      Chamber Music
    • Duration - 17:05

    • 1.Fast Moving Opposition 9'

    • 2.Fisherman’s Wives and Golden Ratio 9'

    2 Pieces 2020 for Strange Ensemble

    「2 Pieces 2020 for Strange Ensemble」は、MUSIC FUTURE Vol.3のために書いた楽曲です。誰もやっていない変わった編成で変わった曲を作ろうというのが始まりでした。

    第1曲はヘ短調の分散和音でできており、第2曲は嬰ヘ短調でできるだけシンプルに作りました。

    大きなコンセプトとしては、第1曲は音と沈黙、躍動と静止などの対比、第2曲は全体が黄金比率1対1.618(5対8)の時間配分で構成されています。つまりだんだん増殖していき(簡単にいうと盛り上がる)黄金比率ポイントからゆっくり静かになっていきます。黄金比率はあくまで視覚の中での均整の取れたフォームなのですが、時間軸の上でその均整は保たれるかの実験です。

    第1曲「Fast Moving Opposition」は直訳すれば「素早く動いている対比」ということになり、第2曲の「Fisherman’s Wives and Golden Ratio」は「漁師の妻たちと黄金比」という何とも意味不明な内容です。これはサルバドール・ダリの絵画展からインスピレーションを得てつけたタイトルですが、絵画自体から直接触発されたものではありません。ですが、制作の過程でダリの「素早く動いている静物」「カダケスの4人の漁師の妻たち、あるいは太陽」が絶えず視界の片隅にあり、何らかの影響があったことは間違いありません。ただし、前者の絵画が黄金比でできているのに対し、今回の楽曲作りでは後者にそのコンセプトは移しています。

    • Symphony No.2(2021)

      Orchestra
    • Duration - 37:32

    • I.What the world is now? 12'

    • II.Variation 14 11'

    • III.Nursery rhyme 15'

    Symphony No.2

    1. Symphony No.2 (World Premiere)
    2020年9月にパリとストラスブールで初演し、その後世界各地で演奏する予定だったが、パリは2022年4月、その他の都市も2022年以降に延期された。僕としては出来上がった曲の演奏を来年まで待てないので今回W.D.O.で世界初演することに決めた。

    2020年の4~5月にかけて、東京から離れた仕事場で一気に作曲し、大方のオーケストレーションも施した。が、コンサートが延期になり香港映画などで忙しくなったこともあり、そのまま今日まで放置していた。当初は全4楽章を想定していたが、3楽章で完結していることを今回の仕上げの作業中に確信した。

    この時期だからこそ重くないものを書きたかった。つまり純粋に音の運動性を追求する楽曲を目指した。36分くらいの作品になった。

    Mov.1 What the world is now?
    チェロより始まるフレーズが全体の単一モチーフであり、それのヴァリエーションによって構成した。またリズムの変化が音楽の表情を変える大きな要素でもある。

    Mov.2 Variation 14
    「Variation 14」として昨年のMUSIC FUTURE Vol.7において小編成で演奏した。テーマと14のヴァリエーション、それとコーダでできている。とてもリズミックな楽曲に仕上がった。ネット配信で観た海外の音楽関係者からも好評を得た。

    Mov.3 Nursery rhyme
    日本のわらべ歌をもとにミニマル的アプローチでどこまでシンフォニックになるかの実験作である。途中から変拍子のアップテンポになるがここもわらべ歌のヴァリエーションでできている。より日本的であることがむしろグローバルである!そんなことを意識して作曲した。約15分かかる大掛かりな曲になった。

    • The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra(2020)

      Orchestra
    • Duration - 24:26

    • I.Crossing Lines 9'

    • II.The Scaling 7'

    • III.The Circles 8'

    The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra

    「The Border」はホルン奏者の福川伸陽氏から依頼されて作曲した。全3楽章、約24分の作品になった。

    初演は2020年2月13日 東京オペラシティ コンサートホールで、ソロ・ホルン 福川伸陽、豊田実加、藤田麻理絵の諸氏とフューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)によって演奏され、同時にレコーディングもされた。

    I. Crossing Linesは、16分音符の3、5、7、11、13音毎にアクセントがあるリズムをベースに構成した。つまり支配しているのはすべてリズムであり、その構造が見えやすいように音の構造はシンプルなScale(音階)にした。

    II. The Scalingは、G#-A-B-C#-D-E-F#の7音からなる音階を基本モチーフとして、ホルンの持つ表現力、可能性を引き出しつつ論理的な構造を維持するよう努めた。

    III. The Circlesは、ロンド形式に近い構造を持っている。Tuttiの部分とホルンとの掛け合いが変化しながら楽曲はクライマックスを迎える。以前に書いた「エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための室内交響曲」の第3楽章をベースに再構成した。ホルンとオーケストラによってまるで別の作品になったことは望外の喜びである。

    久石譲

    • “World Dreams” Suite(2019)

      Orchestra
    • Duration - 12:46

    • I.World Dreams 4'

    • II.Driving to Future 4'

    • III.Diary 5'

    “World Dreams” Suite

    「World Dreams」は、2004年に新日本フィルハーモニー交響楽団と活動を始めたWORLD DREAM ORCHESTRA(W.D.O.)のために作曲した。

    2001年に9.11(米同時多発テロ)が起きてから、世界はバラバラになり、今までの価値観ではもうやっていけなくなるという感覚が自分の中で強くあった。だからこそ、世界中の人々が違いを言うのではなく、世界を一つの国として捉えるような曲、つまり国歌のような朗々としたメロディーの曲を作りたいと思った。

    作曲していた当時、頭を過っていた映像は、ビルに突っ込む飛行機、アフガンやイラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだったが、2022年の現在、それはウクライナの人々に変わっただけで世界は何も変わっていなかった。世界はどこに行くのか? 絶望的な気持ちになるが、それでも僕は”世界の夢”(World Dreams)である平和な世界(もしそういうものがあるとしたら)がいつか訪れると信じたい。

    その「World Dreams」の組曲を作りたいという構想はずっとあったが、2019年に、様々な仕事で書き溜めた楽曲をもとにした3管編成(約90人)の約13分の組曲として完成した。3曲からなり、上述の1.World Dreams、ミニマル的で軽快な曲となった2.Driving to Future、そして、3.Dairyはやはり国歌に通じる厳かな楽曲になった。

    初演は、2019年のWORLD DREAM ORCHESTRA Tourで、作曲者本人の指揮で行った。

    久石譲

    • ASIAN SYMPHONY(2017)

      Orchestra
    • Duration - 26:37

    • I.Dawn of Asia 5'

    • II.Hurly-Burly 3'

    • III.Monkey Forest 6'

    • IV.Absolution 6'

    • V.Asian Crisis 6'