• Symphony No.2(2021)

      Orchestra
    • Duration - 37:32

    • I.What the world is now? 12'

    • II.Variation 14 11'

    • III.Nursery rhyme 15'

    Symphony No.2

    1. Symphony No.2 (World Premiere)
    2020年9月にパリとストラスブールで初演し、その後世界各地で演奏する予定だったが、パリは2022年4月、その他の都市も2022年以降に延期された。僕としては出来上がった曲の演奏を来年まで待てないので今回W.D.O.で世界初演することに決めた。

    2020年の4~5月にかけて、東京から離れた仕事場で一気に作曲し、大方のオーケストレーションも施した。が、コンサートが延期になり香港映画などで忙しくなったこともあり、そのまま今日まで放置していた。当初は全4楽章を想定していたが、3楽章で完結していることを今回の仕上げの作業中に確信した。

    この時期だからこそ重くないものを書きたかった。つまり純粋に音の運動性を追求する楽曲を目指した。36分くらいの作品になった。

    Mov.1 What the world is now?
    チェロより始まるフレーズが全体の単一モチーフであり、それのヴァリエーションによって構成した。またリズムの変化が音楽の表情を変える大きな要素でもある。

    Mov.2 Variation 14
    「Variation 14」として昨年のMUSIC FUTURE Vol.7において小編成で演奏した。テーマと14のヴァリエーション、それとコーダでできている。とてもリズミックな楽曲に仕上がった。ネット配信で観た海外の音楽関係者からも好評を得た。

    Mov.3 Nursery rhyme
    日本のわらべ歌をもとにミニマル的アプローチでどこまでシンフォニックになるかの実験作である。途中から変拍子のアップテンポになるがここもわらべ歌のヴァリエーションでできている。より日本的であることがむしろグローバルである!そんなことを意識して作曲した。約15分かかる大掛かりな曲になった。

    • The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra(2020)

      Orchestra
    • Duration - 24:26

    • I.Crossing Lines 9'

    • II.The Scaling 7'

    • III.The Circles 8'

    The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra

    「The Border」はホルン奏者の福川伸陽氏から依頼されて作曲した。全3楽章、約24分の作品になった。

    初演は2020年2月13日 東京オペラシティ コンサートホールで、ソロ・ホルン 福川伸陽、豊田実加、藤田麻理絵の諸氏とフューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)によって演奏され、同時にレコーディングもされた。

    I. Crossing Linesは、16分音符の3、5、7、11、13音毎にアクセントがあるリズムをベースに構成した。つまり支配しているのはすべてリズムであり、その構造が見えやすいように音の構造はシンプルなScale(音階)にした。

    II. The Scalingは、G#-A-B-C#-D-E-F#の7音からなる音階を基本モチーフとして、ホルンの持つ表現力、可能性を引き出しつつ論理的な構造を維持するよう努めた。

    III. The Circlesは、ロンド形式に近い構造を持っている。Tuttiの部分とホルンとの掛け合いが変化しながら楽曲はクライマックスを迎える。以前に書いた「エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための室内交響曲」の第3楽章をベースに再構成した。ホルンとオーケストラによってまるで別の作品になったことは望外の喜びである。

    久石譲

    • “World Dreams” Suite(2019)

      Orchestra
    • Duration - 12:46

    • I.World Dreams 4'

    • II.Driving to Future 4'

    • III.Diary 5'

    “World Dreams” Suite

    「World Dreams」は、2004年に新日本フィルハーモニー交響楽団と活動を始めたWORLD DREAM ORCHESTRA(W.D.O.)のために作曲した。

    2001年に9.11(米同時多発テロ)が起きてから、世界はバラバラになり、今までの価値観ではもうやっていけなくなるという感覚が自分の中で強くあった。だからこそ、世界中の人々が違いを言うのではなく、世界を一つの国として捉えるような曲、つまり国歌のような朗々としたメロディーの曲を作りたいと思った。

    作曲していた当時、頭を過っていた映像は、ビルに突っ込む飛行機、アフガンやイラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだったが、2022年の現在、それはウクライナの人々に変わっただけで世界は何も変わっていなかった。世界はどこに行くのか? 絶望的な気持ちになるが、それでも僕は”世界の夢”(World Dreams)である平和な世界(もしそういうものがあるとしたら)がいつか訪れると信じたい。

    その「World Dreams」の組曲を作りたいという構想はずっとあったが、2019年に、様々な仕事で書き溜めた楽曲をもとにした3管編成(約90人)の約13分の組曲として完成した。3曲からなり、上述の1.World Dreams、ミニマル的で軽快な曲となった2.Driving to Future、そして、3.Dairyはやはり国歌に通じる厳かな楽曲になった。

    初演は、2019年のWORLD DREAM ORCHESTRA Tourで、作曲者本人の指揮で行った。

    久石譲

    • Variation 14 for MFB(2020)

      Chamber Music
    • Duration - 10:27

    Variation 14 for MFB

    「Variation 14 for MFB(Music Future Band)」は今年の4月に書いた「Symphony No.2」の2楽章として作曲した楽曲です。それをMUSIC FUTURE Vol.7で演奏できるようにRe-composeしました。音の純粋な運動性を追求した楽曲です。テーマと14の変奏、それとコーダで構成しています。約11分の楽曲ですが、分かりやすくシンプル(しかし演奏は難しい)な楽曲を目指しました。今は楽しめることが一番大切だと考えています。

    久石譲

    • Symphonic Suite “Kiki’s Delivery Service”(2019)

      Film
    • Duration - 24:40

    • 1.On a Clear Day ~ A Town with an Ocean View 5'

    • 2.The Baker’s Assistant ~ Starting the Job 2'

    • 3.Surrogate Jiji ~ Jeff 3'

    • 4.A Very Busy Kiki ~ Late for the Party 2'

    • 5.A Propeller Driven Bicycle ~ I Can’t Fly! 2'

    • 6.Heartbroken Kiki ~ An Unusual Painting 3'

    • 7.The Adventure of Freedom, Out of Control ~ The Old Man’s Push Broom ~ Rendezvous on the Push Broom 4'

    • 8.Mother’s Broom 3'

    • Woman for Piano Harp Percussion and Strings(2019)

      Other
    • Duration - 10:23

    • 1.Woman 3'

    • 2.Ponyo on the Cliff by the Sea 3'

    • 3.Les Aventuriers 4'

    • Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra(2019)

      Chamber Music
    • Duration - 16:55

    • Movement 1 7'

    • Movement 2 2'

    • Movement 3 9'

    Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra

    MUSIC FUTURE Vol.6のために書き下ろした新作は、2台のピアノと室内オーケストラで演奏される。3楽章形式だが、第2曲は2分弱の短い曲で第1曲と第3曲のブリッジのような役割を果たしている。作曲のスタイルは久石が提唱しているSingle Track Musicという手法でできている。ここでは和音がなく、ただ単旋律が変容しながら続いていく。だが、ある音が高音に配置され、またある音が低音に配置されると3声のフーガの様に聞こえ、また発音時は同じ音でもそれがエコーのように弾き伸ばされると和音的効果も生まれる。

    今回も概ねその手法でできているが、第2曲はより自由な形式で和音もあり、奏者の即興性に委ねられている。それは滑川真希、デニス・ラッセル・デイヴィス夫妻への信頼の証であろう。

    Variation 57は文字通り各楽章の3つのモチーフのほか57のヴァリエーション、変奏でできている。久石は「ニューヨークの57thストリートに滞在していた時に着想し、スケッチも書いた」と語っている。また第3曲は現代の音楽では珍しく、2016年のダンロップのCM(福山雅治が出演)とした書いた曲をベースに作られている。

    • Philip Glass / Joe Hisasihi: Les Enfants Terrible(2019)

      Chamber Music
    • 1.Overture

    • 2.The Bedroom

    • 3.Elizabeth chooses a career

    • 4.Finale-Death of the Twins

    Philip Glass / Joe Hisasihi: Les Enfants Terrible

    原題の「Les Enfants Terribles」はジャン・コクトーの1929年に出版された小説と1950年のジャン=ピエール・メルビル監督の映画を元に振付師スーザン・マーシャルとコラボして1996年に作曲された。4人の歌手と3台のピアノのためのダンス付きの室内オペラになっている。4人の子供たちの儚くも美しい無軌道な共同生活が破局を迎えるまでの悲劇的ないきさつを描いたオペラで、世界初演は1996年5月18日にツーク(スイス)で行われた。

    その後グラス氏の盟友である滑川真希、デニス・ラッセル・デイヴィス夫妻によってピアノの連弾による6曲の組曲になった。

    今回MUSIC FUTURE Vol.6としてご夫妻を迎えるにあたって、久石譲が新たに2台のピアノと室内オーケストラ作品としてアレンジした。曲数も4曲に絞られた。久石は「デニスさんは指揮者、ピアニストとしてグラスさんの最高の理解者、交響曲全集もCD化している。だから彼と真希さんの演奏を尊重し、かつ想定してアレンジした」と語っている。

    • Philip Grass:2 Pages Recomposed(2018)

      Chamber Music
    • Duration - 14:40

    • The Black Fireworks 2018 for Violoncello and Chamber Orchestra(2018)

      Chamber Music
    • Duration - 20:38

    • 1.The Black Fireworks 11'

    • 2.Passing Away in the Sky 10'

    The Black Fireworks 2018 for Violoncello and Chamber Orchestra

    ここ数年僕は単旋律の音楽を追求しています。一つのモチーフの変化だけで楽曲を構成する方法なので、様々な楽器が演奏していたとしても、どのパートであっても同時に鳴る音は全て同じ音です(オクターヴの違いはありますが)。

    ですが、単旋律のいくつかの音が低音や高音で演奏することで、まるでフーガのように別の旋律が聞こえてきたり、また単旋律のある音がエコーのように伸びる(あるいは刻む)ことで和音感を補っていますが、あくまで音の発音時は同じ音です。僕はこの方法をSingle Track Musicと呼んでいます。Single Trackは鉄道用語で単線という意味です。

    「The Black Fireworks 2018」は、この方法で2017年にバンドネオンと室内オーケストラのために書いた曲をベースに、新たにチェロとオーケストラのための楽曲として書きました。伝統的なコンチェルトのように両者が対峙するようなものではなく、寄り添いながらも別の道を歩く、そのようなことをイメージしています。

    タイトルは、昨年福島で出会った少年の話した内容から付けました。彼は東日本大震災で家族や家を失った少年たちの一人でした。彼は「白い花火の後に黒い花火が上がって、それが白い花火をかき消している」と言いました。「白い花火」を「黒い花火」がかき消す? 不思議に思って何度も同じ質問を彼にしましたが答えは同じ、本当に彼にはそう見えたのです。

    そのシュールな言葉がずっと心に残りました。彼の観たものはおそらく精神的なものであると推察はしましたが、同時に人生の光と闇、孤独と狂気、生と死など人間がいつか辿り着くであろう彼岸をも連想させました。タイトルはこれ以外考えられませんでした。その少年にいつかこの楽曲を聴いて欲しいと願っています。